龍頭の舞は、露払いを務める太刀の演目と、三匹の獅子が舞う獅子舞から成ります。
なぜその所作が生まれたのか──五百年伝えられてきた「云われ」とともにご紹介します。
太刀は、獅子舞に先立って場を清める役目を担います。演じ手は小学一年生から大人まで。学年が上がるにつれて演目も変わっていくのが四谷の伝承のかたちです。
全ての太刀は
礼に始まり、礼に終る。
四方の神を鎮める儀式。「これから少し騒がしくなりますが、お祭りです」と案内し、四方の神様に喜んで見てもらうための挨拶をする演目です。祭りの一番最初に、保存会会長と四谷町会長が竜柄の浴衣に紋付黒羽織を着て演じます。
「七ツ」は武芸の初太刀と、七つの歳(初立ち)をもじったものと言われています。「豆ハット(法度)」とも呼ばれ、七歳から八歳までの子どもが主となって行う、太刀のはじまりの演目です。
やい、はっとうやい、えやとうは、やっとう
えんしゃは、やい、えやとうは、やっとう
六尺棒をひざして、払い守る技です。七ツ太刀を経た子どもたちが、次に覚える演目になります。
やい、えんやぁやい、えんやえんや
えやとう えん やとう
えんやぁ やぁやい、えんやえんや
えやとう えん やとう
六尺棒で追ってくる足を払い、打ち返す技です。両者がすれ違いざまに、刀のつばを触れ合わせて交えます。
えん、やぁとう、やぁとう
えやとう えん やとう
えん、やとう、やい、えやとう
えんや、えんや やっとう
邪悪を祓い、祭りの場を清めるために、真刀で行う唯一の演目です。刀は江戸時代に千人同心が所持していた備前刀・藤原忠国。反りが少ないのが特徴です。
棒使いが棒を多留間(たるま)とは逆に、時計回りに回転させ、太刀がそれに合わせて打ち込む演目です。「えんや」で大きく離れ、そこから打ち込みます。
やぁ とう やい
とう とう とう とう
とう とう とう とう えやと
やぁとう やぁとう
えやと えん やっとう
棒が相手のこめかみを打ってくるのを、太刀が構えて受け止める演目。次に肩、肘、足の踝(くるぶし)を目掛けて打ってきます。太刀の中でも特に迫力のある演目です。
やい、えん、えん、えん やぁい
え、いや、は、いや、えやとう
えん やっとう
え、いや、は、いや、えやとう
えん、やっとう
棒使いが棒を回転させ、その中を太刀が合わせて打ち込む演目です。「えんや」で大きく離れ、打ち込みます。
やい、えんやぁ はっとう・えんや
やぁとう やぁとう えやと
やぁとう やぁとう えやと
えん やっと
棒と棒で行う戦いは、この一つしかありません。昔、城の門番は平時は棒のみを持ち、城への出入りを見張っていました。その流れをくむものと思われます。
やぁ、とう とう とう
とう とう とう とう
とう とう とう とう とう えやとう えん
とう とう とう とう とう
えやとう えん やっとう
神聖な宮司様のお祓いを受けてから、道行が始まります。会館を出て祭会場を通り、四谷十字路を抜け、途中の一休みを経て一の鳥居前へ。ここで一時、街道の車輌を停止させて四方囲めを行い、場を鎮めてから参道を歩き、諏訪神社の境内へと進みます。
獅子舞は「庭入り」に始まり「とられた」で終わる、一続きの物語です。神を恐れ、喜び、争い、そして和解する──世間でよくある出来事を通して、人の心境を表現したものと言われています。四谷の獅子舞は俗に「獅子狂い」とも呼ばれ、荒々しく舞うのが特徴です。
神聖なる神の庭へ向かう途中、獅子の行く手に何か見慣れないものが居る。大獅子は恐る恐る近づいては遠のき、太鼓を叩き、自分を大きく見せて威嚇を繰り返す。やがてそれが神となる幣束とわかり、仲間とともに神の庭へ狂い込む──そんな場面から物語は始まります。
神は幣束。獅子は恐れてなかなか近寄れず、周りをぐるぐる廻ります。風の音や、石ひとつ踏んでも飛び上がって驚く──その身振り素振りを面白く表しています。
幣束を事無く取った獅子が、三匹揃って浮かれ楽しむ。時には得意げに腹を返し、手足を伸ばして転がります。
獅子が太刀にじゃれる様を表した舞。現在では伝承されていません。
獅子がごろりごろりと喜び、腹を見せる様を表した舞です。
獅子が弓にたわむれる様を表した舞。現在では伝承されていません。
獅子がまりにじゃれつく様を表した舞。現在では伝承されていません。
獅子が最高潮に浮かれ浮かれて、舞と笛の粋を集めた様を表した舞。演目全体の山場です。
岡崎の終了に合わせて、師匠が唄を歌います。
怖い者なしの獅子が、乙女の花笠(はちすの花)の香りに花見としゃれこむ。六名の着飾る花の廻りを二度三度、初めは静かに、次第に酔いが廻るにつれて暴れて狂い廻る様を表した舞です。
雄獅子が浮かれ浮かれて、いつしか花の中に雌獅子を見失う。花の中を探し求め、互いに雌獅子を取り合うために歯音を立てて意気込む様を表した舞です。
尻向けの舞を三匹揃って舞い、かみ合うこと数回。獅子も疲れて和解する様を表した舞。この演目で獅子舞は幕を閉じます。
獅子舞には四曲の唄があります。歌詞は諏訪神社に伝わる古文書「古例祭順序概略」に記されたものです。
京から下る 唐絵の屏風
一重にしゃんと立ち回し
この森に 鷹が棲むやら棲まぬやら
鷹が棲むそで 鈴の音がする禰宜(ねぎ)の御神楽
裏山の松にからまる 蔦の花
縁がきれれば ほろりほろりと
大山見れば 雲があるやら雨があるやら
おいとま申して いざ帰ろう
此の寺の香の煙は 細けれど
天にのぼりて 黒雲となる
獅子舞の編成は、龍頭三名、花笠六名、笛五名、唄二名、木太刀十六名、真太刀六名、棒六名、幣負い一名。加えて太刀掛りには、四谷組のほか諏訪宿組からも参加します。
獅子の扮装──無地の上衣に唐草模様の袴、手甲、白足袋、麻裏草履。頭に二尺ほどの頭(かしら)を載せ、腹に一尺二寸の太鼓を着け、手に撥を持ちます。
花笠の扮装──穢れを知らない少女六名が、揃いの着物に揃いの帯、花柄模様の小さな前掛を着け、白足袋に赤い鼻緒の草履を履く。赤色の布で覆われたまんじゅう笠を被り、その上に十二本の竹に花を模った造花をあしらいます。
太刀・棒・幣負い──いずれも浴衣に赤襷、草履を履きます。
獅子舞などを演ずる「舞台」は、社殿に向かって右側に斎竹を四方に立てて注連縄を張り、砂を撒いて作ります。